山口県宇部市の歯科医院「歯科・沖田オフィス」院長の沖田です。
2024年も早いもので年末になってしまいました。
無事に診療納めの日を迎えられたことを有り難く思うと共に
当院のスタッフ、業者の方など歯科関係者の皆さん、参加した学会やコースでお世話になった方々、そして当院に来院頂いた患者さん、皆さんのお陰なので感謝の気持ちでいっぱいです🙇♂️
来年も少しでも良い歯科治療を提供できるように努力してまいります!
なお、年末年始ですが、当院は2024年12月29日〜2025年1月5日まで休診となります。
今回は長めの休みでご迷惑をおかけしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
ホームページにも少し紹介してはいますが
今回は当院で導入しているセレック(CEREC)について書いてみたいと思います。
目次
セレックとは?
ドイツのシロナ社(現デンツプライシロナ社)が40年近く前に作り出したシステムになります。
ものづくりなどで使われる、コンピューターによる設計(デザイン)とその設計したものを作り出すシステムである、CAD/CAMシステムの一種で
歯科における歯の修復物(詰め物)や補綴物(被せ物)などを短時間で作成するためのシステムになります。
セレックの英語表記は「CEREC」でセラミックレストレーション(セラミック修復)の略であるとか、「Chairside Economical Restoration of Esthetic Ceramics」の頭文字をとったものだとか意見があるそうですが
当院では後者の方で考えております。
診療室のすぐそばで、効率的(経済的にも診療時間的にも)で美しいセラミック修復物を提供する
これがセレックの特徴だと考えているからです( ^ω^ )
セレックで歯に使える材料は?
上記のように、セレックは短時間でセラミックの詰め物や被せ物を作成することができます。
セラミックも多種ありますが、主に使われるのは3種
・長石系セラミック:色や硬さなど含めて歯となじみが良く、適度な硬さと粘りがありますが強度はやや弱め
・強化型セラミック(2ケイ酸リチウムなど):色が良く、強化されているため硬さもあって強度が高くバランスが良い
・ジルコニア(世代で特徴が違う):透明感がやや劣る分、硬さがありセラミックの中では1番壊れにくい。汚れも一番付きにくく熱も伝えにくいため奥歯や神経のある歯で被せ物の厚みに制限がある際に使用されることが多い
これら以外にセラミックとレジンという樹脂を混合したハイブリッドセラミックというのもあります。
この中でも2種類あり、セラミックが主な成分で僅かにつなぎとして樹脂を混ぜたもの(商品名:エナミック)と、樹脂が主な成分でセラミックの粒を混ぜたような物の2種があります。
・ハイブリッドセラミック(主な成分がセラミック):適度な硬さと粘りがあり、馴染みがよく欠けたり割れたりが少なく適合も良いため、歯軋りの強い方に使うことがあります。
・ハイブリッドセラミック(主な成分が樹脂):日本の保険診療に使われるCAD/CAM冠というものが代表になりますが、元々は海外で仮歯に使っていたものにセラミックを混ぜて強度を少し強くしたものと言われています。そのため強度的にはやや劣り、セラミックが少ない分歯とくっつきにくく外れやすいと言われていました。最近では接着剤が改良されてだいぶ外れにくくなっています。条件はありますが、保険診療で行う治療で白い歯を作る際は第一選択になっています。
後は仮歯に使うためのPMMAがあります
・PMMA:仮歯に使う材料で、強い力では割れることもありますが、通常仮歯に使われる粉と液を混ぜて作る仮歯と違って空気が入らず、変色しにくく強度が高いので主に長期的に使用する仮歯として使われます。
セレックがあればどんな材料でも使える?
セレックで使用される材料は主に上記のものになりますが
メーカー違いだったり、少し成分が違ったりで
実際はかなり多くの種類の材料を使って歯を作ることが可能です。
ただ、セレックを導入していると書いている医院で全ての材料を使えるわけではありません。
強化型セラミックやジルコニアは、クリスタライゼーションやシンタリングと言われる、わかりやすいイメージで言うと焼き固めることが必要になるので
ファーネスと呼ばれる機械がないと強化型セラミック(一部は焼成無しで使える材料もあり)やジルコニアの歯は作ることができません。
セレックのシステムとは?
セレックをしようと思うと
最低でもコンピューター支援による設計と加工製造をするためのシステムが必要になります。
それしかない場合は、ファーネスで焼く必要のない材料しか使えないという制限がでます。
当院が導入しているものは
CADにあたる設計ソフト付きの口腔内スキャナー2台
CAMにあたる加工機(ミリングマシーン)1台
ファーネス(焼成):2台
これ以外に、ジルコニアを削る際に必要な切削片を吸い取る専用のバキュームもあります。
これらを使って、
ファーネスで焼く必要のないセラミックから
主に保険診療で使うCAD/CAM冠用ブロック
長期使用予定のPMMAの仮歯
ファーネスを使って焼く必要はありますが、より強度と審美性を持たせたセラミックやジルコニア
など、現在セレックで使用できる全ての材料を使えるようにしています🦷✨
セレックは詰め物や被せ物以外に使えないの?
現在ではセレックの使用範囲は増えており
院内で作れるものとしたらインプラント治療に用いるガイドがあります。
また、院内では作れませんが、マウスピース矯正のためのデータをとることも可能です。
インプラント用のガイド制作
ガイドというのはインプラントを埋入する方向がズレないようにするための装置で
それを使った手術をガイデッドサージェリーと呼んだりします。
骨は硬さがまちまちで、特に骨が足りなくて造った骨などは柔らかいことが多く
インプラントを入れるための穴を作るのにドリルが柔らかい方に流れてしまうことがあります。
また、当院でオペ回数を減らして出来るだけ短期に治療を終えるために行う抜歯即時インプラント埋入などは、歯を抜いたら穴があいてしまってドリルの方向が定まりにくくなるので
ここにしかインプラント治療ができないっという場合には、安心安全なガイドを用いた手術をします。
このセレックシステムと、当院の歯科用CTは同じメーカーなので
セレックで考えた歯の位置と形と、その部位の骨がどのような状態なのかを調べるためのCTデータをマッチさせて、しっかり上下の歯が噛み合うような位置にインプラントを埋入できるように設計し
そのデータから加工機でガイドを作ることもしています(現在は少数歯のみ適応)
上記のインプラントをした方は、奥のインプラント治療中に前の歯が折れてしまい、折れた歯の部位に抜歯即時インプラントをして治療期間を短縮しています。
このように口腔内で直接とったデータから削り出したガイドはピッタリ適合して、抜歯即時インプラント治療でも計画通りの良い位置に入りました( ^ω^ )
マウスピース矯正(アライナー矯正)のデータ作成
お口の中の画像データをとり、それをメーカーさんの専用サイトにあげて
そこからどのような矯正治療をするかでシミュレーション画像を作ります。
これをもとに患者さんと相談して調整し最終的な歯の位置や噛み合わせを考えます。
時々、矯正後に骨から外れた位置に歯がきていたり、大きく歯茎が下がったりする重大なトラブルの報告がありますが
当院ではCTデータから、骨と歯根を考えた位置で矯正するようにしています。
また、このように可視化することで、骨の状態や歯根の状態から患者さんの希望に沿える矯正が可能なのかなどを判断したり、当院ではなく矯正専門医でやるべきかどうかの判断材料にもしています。
セレックでの治療例(自院症例)
実際に当院でセレックによる詰め物や被せ物の治療を行った方です。
こちらは症例ページに記載予定なので、詳しい内容はアップされ次第そちらで確認をお願いします😅
43歳男性の方で
「左上の奥歯の被せが取れたのと前歯が何度も詰め物が取れて付けてを繰り返していて、見た目が変になってきた」との主訴でした。
歯が重なっていて磨きにくく本当は矯正治療をした方が良いのもありますが、現状で噛み合わせは安定しており磨きにくい歯は定期的なメインテナンスで様子を見ることで治療を開始。
最初は保険診療で治療予定で、外れた奥歯はセレックによる保険診療のCAD/CAM冠というので治療をしましたが
その後は費用を抑えながら出来るだけ綺麗で虫歯や歯周病予防で汚れがつきにくいものにされたいとの希望で、セレックによるセラミック修復をクラウン2本、インレー1本、ベニア2本ほどしております。
金属の修復物がそれ以上ありましたが、可能な範囲でコンポジットレジンでの治療を行い、セレックでの修復は最小限に抑えました(こんなことをしていると利益が減るので普通の歯科医院では全て金属部分はセラミックにされるかと思いますが、当院は患者さんのことを第一に考え相談の上で大きく削らなくて済むレジン充填をまずは考えています😅)。
費用を抑えるのと奥歯はそこまで見た目が気にならないとのことで、色調はそこまでこだわったものでなく、神経の無い歯は硬すぎないようにとセラミックでも少し材料を変えて治療をしたのでやや色調の違いはありますが。。。
患者さんには満足して頂いております。
ただ、前歯はやはり一番目立つ歯なので、こちらはある程度の色をつけて、出来るだけ自然なセラミックベニア治療を目指しました。
自作なので、もちろん歯科技工士さんが作るほどの自然な歯の再現はできておりませんが、セレックで費用を抑えながら自分ができる範囲で作成したものを装着しました。
前歯が綺麗になったと喜んで頂けてめちゃくちゃ嬉しかったです(^^)
(今回は左右の同じ歯を治療したので色が合わせ易いですが、これが一本だけ他の自分の歯に合わせるとなると著名な歯科技工士さんでも1回で仕上げるのは至難の業になってきます💧)
ワンデイトリートメント
セレックシステムの一番の売りは、最短で当日治療が可能ということです。
ファーネスで焼いたり、色調再現をするかで時間は変わってきますが
虫歯や被せ物がなくなって作る場合に、当日2時間〜くらいの診療時間で当日にセラミック修復ができてしまいます。
ワンデイトリートメントのメリット
・汚染が少ない:削った直後が歯が一番綺麗な状態です。被せ物ができるまでの期間に仮蓋等をしても中は食べかすなどが入ってしまい、汚染されてしまいます。当日にセラミックをしっかりつけることで、汚染から歯を守ります。
・神経の保護につながる:歯の内部の象牙質は細かな穴がたくさん開いており、神経とつながっています。細菌が内部に感染して神経に炎症が出てしまうと、最悪神経が死んでしまうので。削った直後に早めにセラミックをつけることによって感染を防ぎ神経を守ります。
・セラミックの付きが良い:汚染が少ない状態が接着剤が1番良く付きます。なので、削った直後が接着というのを考えると1番良い状態になります。
・忙しい方、早く歯を入れたい方におすすめできる:通常は歯科技工士さんに模型かデータを送り、被せ物を作るので最低でも数日はかかります。セレックは当日制作が可能なので、仕事でなかなか休みがない、年末ギリギリや旅行前、留学や引っ越し前、などに短期間で歯を入れることが可能になります。
ワンデイトリートメントのデメリット
・治療時間がかかる:セラミックを削り出す時間や、必要ならファーネスで焼く時間などがかかるため1日で被せ物の治療は終わりますが、治療時間は長くなります。ただ、歯の治療をして口腔内スキャナーでデータを作成すれば、後は歯科医院の方でセラミックの削り出しや焼く作業になるので。仮蓋などをして一旦医院から出て買い物や食事をして戻ってきてから装着や、午前で歯の治療をして一旦外出、午後や夕方に再度来院頂きセラミック装着など1日1回の来院での治療もしくは、1日2度来院での治療も可能です。
・保険診療ではできない:保険診療はまだ型取りをしてから被せ物を作製するしか認められていません。一部インレーは口腔内スキャナーのデータだけで治療が可能ですが、それも当日で作成して装着するのは認められていません。ちなみに材料も保険診療ではプラスチックの多い材料しか認められていないため、セラミックを使うことはできません。
このようにメリット・デメリットがありますが
セレックシステムの元々のコンセプトである、「院内で効率的に短時間でセラミック修復を行う」を実現するのはワンデイトリートメントになります。
ただ、お急ぎでない場合や神経の無い歯などは来院日を別にして治療することも多く
早い方が良ければ翌日や2〜3日後などに被せ物を装着できます(通常の保険治療のように1週間待たないと被せ物を装着できないといったことはありません)
以上が、当院でのセレックシステムのご紹介でした!
難しい内容も多く、わかりにくいことも多いかと思いますので。
セレックでの治療についてご興味のある方はお気軽にご相談ください!!