山口県宇部市の歯科医院「歯科・沖田オフィス」院長の沖田です🦷✨
早いもので今年ももうすぐ終わりますね💦
例年より暖かい気はしますが、年末年始の体調管理に気をつけてください!
また、せっかくの年末年始に食事がしにくいのも困ると思うので
お口の不具合などがあれば早めに歯医者さんに相談されてください!
今回は歯を抜く必要が出た時に、歯茎や骨を守るためにはどうしたら良いのか?について書いていきます。
目次
歯を抜く必要があるのはどんな時?
多くは歯周病、虫歯、歯根の先の病気(根尖性歯周炎)、歯の破折、転倒や歯に何かが当たってしまうなどの事故で抜歯が必要になった、などが主な抜歯の原因かと思います。
(歯医者さん側の問題である医原性疾患による抜歯もありますが…。)
他は、まれに嚢胞や腫瘍といった病気などが原因で、大学病院や病院で抜歯になることもありますが
今回は一般的な抜歯が必要な時の話になります。
抜歯のタイミングについて
抜歯が必要な場合でも、状況によってはすぐに歯を抜かないこともあります。
可能なら当日に抜歯する場合
歯周病で歯がグラグラしていて、動いて痛みがある場合は応急処置のしようがないことがあるので
痛みをなくすために当日に抜歯することがあります。
この場合は、自分の身体が歯周病になっている歯を押し出そうとしてきているので
麻酔をしたらすぐに抜けますし、すでに周りの骨がなくなっているので
抜いて自然に骨や歯茎が治るのを待つだけになります。
ただし、腫れや何もしなくても痛い場合などの急性症状があると、痛みや腫れを引かしてからでないと麻酔注射が効かなかったり、抜歯後の出血や腫れ、痛みが強くなることがあるので
その場合は、まずは薬などの投与で急性症状を抑えてから抜歯になります。
後日抜歯する場合
上記のようなグラグラな歯でも予約状況でによっては抜歯する時間がないので
一旦接着剤などで隣の歯と固定して、次回に抜歯する準備と時間を確保してから抜歯になりますが。
虫歯や、歯の破折、そこまでグラグラしていない歯周病などでの抜歯が必要な場合
当院では、その歯の抜歯をした後にどのような治療を希望されているかを先に相談した後に抜歯をしています。
抜歯した後の変化
抜歯すると必ず骨や歯茎が痩せてしまいます。
これは歯の根の周りにある血管などが抜歯でなくなってしまうせいで
抜歯する際の状態にもよりますが、平均で骨の幅が4m m、高さが2m mも減ると言われています😰
通常のインプラント治療で用いるインプラント本体の幅がどこのインプラントメーカーさんもおよそ4mm前後なので
インプラント1本分も骨が痩せてしまうことになります。。。😱
また、もともと欧米の方に比べて日本人は歯茎も骨も薄く、抜歯後の吸収が大きいと言われています。
なので、抜歯後にどのような治療をするかが決まっていたら、抜歯の際に骨をできるだけ減らさないようにする
リッジプリザベーション(ソケットプリザベーションや歯槽堤温存術などとも呼ばれることがありますが)という処置をすることがあります。
リッジプリザベーション(歯槽堤温存術)ってなに?
これは抜歯してそのままにしていたら必ず減っていく骨や歯茎をできるだけ減らさないようにする処置になります。
抜歯した後に根の先や周りの傷んだ部分をしっかり掃除をした後に
内部に骨に変わる骨補填材(こつほてんざい:自家骨、他家骨、異種骨、人工骨など)を入れ、それらが出てこないようにするためと、骨と歯茎では歯茎の方が治るスピードが早いので、その歯茎が入ってこないようにするためにメンブレンという遮断膜を置いて縫合する処置になります。
少し簡易的にする場合は、骨補填材を入れた後にメンブレンではなく、歯茎の治癒を早めるためにテルプラグ(商品名)などのコラーゲンのスポンジのようなものを置いて縫い付ける方法もあります。
また、もっと簡易的な方法としてテルプラグなどを入れるだけの方法もありますが、こちらは歯茎の治癒を早めて内部の骨の治りも早めて骨が減らないのを期待する方法になります。
テルプラグだけでは確実に骨が減らない方法とまでは言えないかもしれませんが、国内の大学の先生の報告では効果があると言われています。
これらの方法のどれを行うかは、抜歯後の治療方針などで考えていきます。
リッジプリザベーションのメリット
これは目的でもある歯茎や骨が痩せるのを防止できることです。
全く減らさないというのは無理ですが、歯茎や骨の吸収をかなり抑えることができるので
歯茎や骨の幅や高さを維持できます。
それの何がメリットか?というと
その後の処置で、どんな治療をするにしても条件が良くなるということです💡
・抜歯後が入れ歯の場合
入れ歯であっても、痩せてとがった歯茎や骨の上に入れ歯がくると安定が悪く、とがった骨の上の歯茎に入れ歯が当たると痛くて噛みにくいです。
歯茎や骨の幅や高さがあった方が、上に乗る入れ歯が安定して噛みやすいのは想像しやすいかと思います。
・抜歯後がブリッジの場合
歯茎や骨が痩せると、長い歯になってしまうことがあり前歯では見た目が悪くなってしまいます。
奥歯は見た目の問題が少なく歯が長くなっても噛むのには問題ありませんが、抜歯した上にくるブリッジの歯より歯茎や骨が痩せてしまうと、ブリッジの下に凹みが出てしまい歯ブラシが届きにくくなってしまいます。
そうすると汚れが溜まりやすくなって歯茎が腫れたり、残った歯の虫歯や歯周病のリスクが上がります。
また、歯茎や骨が痩せて隙間ができると空気や飲食物が漏れてしまうので、発音しにくい状態になったり(特に前歯のすき間は、英語の発音で影響が出やすいと言われています)飲食物が漏れてしまって困るなどの症状が出ることがあります。
・抜歯後がインプラントの場合
インプラントは骨にチタン製のネジのようなものを入れて歯を作る方法になるので、骨がないとインプラントはできません。
なので、痩せてしまっている場合は骨を大きく造らないとインプラント治療ができないことが多く、1回の手術ではなく数回の骨増成手術が必要になることもあり、その場合は時間も費用も多くかかってしまいますし、それだけやっても骨を造るのは感染などのリスクもあって上手くいかないこともあります。
リッジプリザベーションは抜歯と同時に行う処置なので、身体がこれから抜歯したところを治す力が働いているのを利用できるので、治癒も早いです。
たとえ、リッジプリザベーション後に少し歯茎や骨が痩せても、少しであればインプラントを入れるのと同時に少し骨を造ることは比較的簡単です。
このようなことから、抜歯後にインプラントを考えている場合は絶対にやったほうが良い治療方法といえます。
リッジプリザベーションのデメリット??
抜歯したら条件さえ良ければやっておいた方が良い治療なので、デメリットは無いと言っても良いのですが。
呼び方はいくつかありますが、この処置を初めて聞く方も多いでは?と思います。
これは日本の保険診療にはリッジプリザベーションという治療がなく、自由診療でしかできないため、多くの歯科医院で説明されずに抜歯されているという現実があります。
使用する材料も、世界的に当たり前に使われている材料が、日本国内では買えなかったり適応がなかったりします。
そのため、保険診療ではできず、費用がかかってしまう点がデメリットになるかもしれません。
ただ、その後の治療がどのようになっても上手くいきやすいなど、多くのメリットがあります。
保険適応がないために説明がなかったり、中にはインプラントなどをされない医院さんではそのような処置をご存知のない先生もおられるかもしれません。
そのため、抜歯後に歯茎も骨もなくなって入れ歯が合わなくて困っている方が、日本は非常に多いと言われています。
リッジプリザベーションの適応外?
・歯周病で歯がグラグラで抜けそうになっている場合
・大きく歯茎や骨がなくなっている場合
これらはリッジプリザベーションの効果が少ない可能性があります。
リッジプリザベーションはあくまで、歯を抜く前の状態をできるだけ保つ(可能なら少し増やすことを目指すこともありますが)ことが目的になります。
保存すべき歯茎や骨がない場合は、残念ながら効果が少ないことになります。
その場合は、骨造成術(GBR)や、軟組織増生術など、別の手術で組織を増やすことを目指します。
実際のリッジプリザベーション
実際の当院でやったリッジプリザベーション治療の写真です。
このように、抜歯と同じ日にリッジプリザベーションを行うので、後で何回も骨や歯茎の手術をする必要がなく
次の治療はインプラントを入れるオペとなり、この方は抜歯時とインプラント埋入時のオペのたった2回のオペでインプラントの上に歯を被せることができました( ^ω^ )
仮に少し骨が少なくても、わずかに骨補填材を入れるだけで、大きく骨を作る必要もないので低侵襲な手術で終わってしまいます。
リッジプリザベーションの費用
当院では、抜歯後の治療方針などで使用する材料ややり方を変えており、その内容で費用が変わってきます。
(インプラントであれば骨補填材やメンブレンを使って確実に骨を作りたいですし、ブリッジや入れ歯で治療期間を短縮したいのであれば早く歯茎を治したいのでコラーゲン製剤を用いたりを考えたりします)
当院での2024年12月現在の費用は
オペ代:20,000〜40,000+材料費(骨補填材の有無、メンブレンもしくはコラーゲンの使用)
となっています。
今後治療の費用が変わる?
円安で材料費が上がってきているのと
人件費や光熱費などがかなり増えてきているのに、元々日本の保険制度の中で歯科は医科よりも治療費が低く
その保険診療の費用も何十年とほとんど同じということもあって値上がり分をカバーできません。
そのため、自由診療の費用を上げるしか、今後の選択肢がないこともありえます。
元々海外では虫歯の治療が1本10万円とか、根管治療が数十万したり、被せ物を作る技工士さんの費用も有名な方が作るだけで20万円以上(歯医者さん側の費用なしの価格で、歯医者さんの費用も考えたら恐ろしい金額になります)するなどと言われています(有名なとこでは某野球選手の元通訳さんが、歯の治療費が900万円以上かかったのを懐に入れたといった報道がありましたね😅)
東京や大阪の先生方では、ダイレクトボンディングが5〜10万円、被せ物が1本20〜25万円、根管治療も大臼歯の場合は20〜30万円以上、インプラントが1本60万円以上などの価格になっているところもあるので。
日本でも、自由診療でしっかり治療をする場合は海外の価格に近付いてきているイメージですね(・_・;
地方は自由診療も安いイメージですが、実際は勉強代は地方都市の方が多くかかります。県外での学会やセミナー受講に行けばセミナー代以外に移動や宿泊費用がかかりますし、たくさん歯医者がいる地域でなければ代わりの歯科医師もおらず診療を休むことになって収入も落ちてしまい大赤字です。(このような費用がかかってくるので、勉強しに行かない先生の方が経営が安定する場合も😵)
そういった国や業界の裏事情?から、当院も本来はもっと自由診療の費用を上げたいところです。
ただ、地方でも都会や世界にも負けない良い治療を、できるだけ受けやすい価格で提供したいと思って、様々な勉強に行っても現状なるべく治療費用を抑えてはおりますが。。。
2025年以降はどうなるかはまだ未定です(報道等で来年も従業員への大幅な賃金アップ要求の話もありますし、社会情勢次第ではどうなることか…)。
このようなことから、今後自由診療で治療をする場合は治療費が下がることはなく、上がっていく一方ではないかと思います。
(保険は治療費が大きく上がらないかもしれませんが、人件費や材料費を無視した保険診療の価格を国が続けると、保険治療の内容によっては診療単価と時間単価を抑えるために材料や診療時間を減らすしか方法がなくなる可能性も??)
もし治療が必要な場合で、自由診療含めてしっかり治療をしたいと思った方は早めにお近くの歯医者さんに相談して頂くのが良いかと思います。
当院ではできるだけ歯を保存することを考えて治療をしております。
ただ、上の写真の実例のような、歯が割れていて膿が出たり腫れを繰り返している場合(きちんとメンテナンスに通っておられたそうですが、歯科衛生士さんが洗浄や薬を入れるだけで院長先生の確認がなく割れたことに気付いてなかったそうです)状態や、長期的にみて保存が厳しい状態の際は抜歯の説明をさせて頂いています。
リッジプリザベーションについてもっと知りたい方、すでに抜歯が必要な歯があるけど歯茎や骨を守りたい!!という方はお気軽にご相談ください。