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インプラント治療口腔外科審美歯科治療院長

山口県宇部市の歯科医院「歯科・沖田オフィス」院長の沖田です。

早いもので2025年も1月後半になってしまいました。

年々、時間が経つのが早く感じてしまいます😅

今回は歯が過剰に多く存在する過剰歯(かじょうし)というものについて書いてみたいと思います。

過剰歯とは?

通常、大人の場合は永久歯が親知らずを入れて32本あります。

親知らずを除いたら28本で、右上に7本、左上に7本、左下に7本、右下に7本という感じで

歯医者の世界では4ブロックに分けて考えていきます。

その28(親知らず数えない場合)〜32本(親知らずを数えた場合)よりもどこかのブロックで多く歯が存在することがあり、それを過剰歯と呼びます。

多く存在するのは、上の前歯が一番多く、まれに親知らずの部位にも過剰歯を認めることがあります。

多くは患者さん自身では気づくことはなく、レントゲン撮影をして見つかることが多いです。

CT画像:前歯の後ろに過剰歯
上と同じ方のCT:歯の裏側に過剰歯が存在

このようにCT撮影をすると3次元的にどの位置にあるか分かり易いです。

過剰歯は何が問題になるのか?

・すきっ歯、噛み合わせの異常

上の前歯の間に過剰歯があると歯が動けなくなってしまい、いわゆるすきっ歯の状態になることがあります。上の前歯が空いてしますと、咬み合う下の前歯の歯並びに影響が出たり、歯の位置が悪いと噛み合わせのバランスも悪くなることがあります。

・感染リスク

歯周病などで歯周ポケットが存在し、深い位置に汚れや歯周病菌などが入ってしまうと過剰歯の周りが感染するリスクがあります。

・虫歯や歯周病のリスク

一部過剰歯の頭が出ていたりすると、非常に磨きにくくなるので過剰歯や隣の歯に汚れが残りやすくて虫歯や歯周病のリスクが上がります。

・発音障害

過剰歯のせいで前歯の間がすきっ歯になると、前歯のすき間から空気がもれます。そのため発音しにくくなることがあります。

・審美障害

すきっ歯は見た目が気になる場合もあります。また、過剰歯がしっかり出てくる方もいて、過剰歯の中には矮小歯(わいしょうし)言われる通常の歯より小さな歯のことも多く、小さな歯がはえてしまうことで見た目が悪くなってしまいます。

上記のような問題がありますが

過剰歯があっても埋伏歯(まいふくし)と言われる骨の中に埋まった状態のままで特に問題がなければ治療をする必要はありません。

実際、かなり高齢な方でたまたまレントゲン撮影をして過剰歯を見つけることも意外と多くありますが、その年齢まで上記の問題がないままで、今後のリスクも少なければ経過観察をすることも多いです。

何か腫れたり痛むなどの症状が出たときは過剰歯が原因のこともあります。過剰歯があることを知らないと気付きにくくなってしまうので、当院ではレントゲンなどで見つけた場合は必ず過剰歯の存在をお伝えして、異常を感じたら過剰歯が原因のこともあるのですぐ連絡を頂くように説明をさせて頂いております。

過剰歯の治療法とは??

抜歯

過剰歯が問題になれば抜歯をします。

ちなみに、上のCTの方は矯正歯科さんに通って矯正治療をされる予定でした。

埋伏している過剰歯を抜いてから矯正治療をする必要があると言われ、自院では対応できないため大学病院に紹介すると言われたそうですが

大学病院ではなく当院で埋伏過剰歯の抜歯をして欲しいとの希望で、CTで埋伏過剰歯の位置を確認した後に通常の局所麻酔下で抜歯をしました。

その後は矯正歯科さんに行かれて経過を追えていませんが

抜歯したのは今から7〜8年前の話ですが、ご両親からは術後も問題なく矯正治療をされたと聞いております🦷

経過観察

特に歯並びや見た目、清掃性などに問題がなければ抜歯はせずに経過観察をしていき

何か症状などが出るようなら、その時に抜歯を考えます。

矯正や被せ物などの治療をする場合

まれに、隣の歯が保存できないときや、虫歯などが大きくて状態が悪い時などは、条件が良ければその歯を抜いて過剰歯を代わりに使うことがあります。

その際に歯を引っ張り出す必要があったり、はえている位置が悪ければ矯正治療が必要になりますし、通常より小さな歯である矮小歯だった場合は詰め物や被せ物で歯の形を変える必要が出ることがあります。

過剰歯がはえていて審美障害がある患者さんの治療例

以前、前歯の真ん中に過剰歯がはえてしまっており、しかも矮小歯で見た目が悪い審美障害を主訴に来られた方の治療をしたので

その治療について記載していきます。

術前の状態

60代半ばの男性の方で、前歯の見た目が気になるとのことでした。

最初に術前・術後の比較からお見せすると

上:術前、下:術後

このように治療後に見た目が大きく変化しました🦷✨

治療の流れですが

術前

術前の正面観
術前の口元:過剰歯が小さく、下の歯が前に出ており審美的な問題があります

上の前歯の間に過剰歯がはえています。ただ、通常より小さな矮小歯で、以前の歯科医院さんで隣の歯と接着材で止めてありました。このことから、歯が動いてしまっていて、条件が悪いことが想像できます😰

見た目の改善を希望されたので、治療方法を考えていきますが

小さな歯で長期的な保存が難しいことから抜歯をして、どのような治療をするかをとても悩みました😖

治療計画①:どこまで治療をするか?矯正治療をするか、しないか

左下の奥歯がなかったり、色々と問題もあるお口の中なので

1番最初に考えるのが、全体的な咬み合わせの治療をするか?しないか?

また、その際に矯正治療をするのか?しないのか?を考えることが大切になります。

・抜歯して矯正治療と被せ物の治療

抜歯したら前歯の間にすき間ができてしまうので、その空間を奥歯を含めて矯正治療で歯を動かして埋めていきます。

矯正治療だけでは奥歯を動かしても空間を埋めきれない可能性もあるので、その場合は見えにくい奥歯の方を被せ物などで歯の形を変えて空間を埋めます。

・矯正治療をせず、抜歯して被せ物などだけでの治療(ブリッジ治療もしくは入れ歯治療)

矮小歯の過剰歯なので、抜歯しても通常の歯より狭い空間しかできません。そのため、インプラント治療は矯正治療をしてわざと歯と歯の間の空間を大きくあけないとインプラントが入りません。

なので、矯正をしないのであればインプラント治療ができず、ブリッジ治療か入れ歯治療を行うしかありません。

治療計画②:矯正治療をせずに前歯をブリッジ治療、ブリッジ治療の選択

矯正治療はされない、全体的な咬み合わせの治療もしない、前歯の入れ歯は嫌だ

とのご希望で前歯だけのブリッジ治療を考えていきましたが

ブリッジ治療も接着ブリッジ治療と通常のブリッジ治療という2つのどちらを選択するかがあります。

接着ブリッジ治療

接着ブリッジとは、あまり歯を削らずに接着剤でセラミックなどを貼り付ける方法です。奥歯のようなしっかり咬む力がかかる部位には適応がなく、あまり強く当たらない前歯に適応があります。

あまり削らないメリットはありますが、接着剤頼りなので外れたり破折するリスクがあります。

接着ブリッジの例(別の患者さんですが、当院で治療をした接着ブリッジの参考例)

接着ブリッジの参考症例:歯の欠損があり、歯の色のチェックをしています。
接着ブリッジの参考症例:接着ブリッジ装着後(セラミック修復)
接着ブリッジの参考症例:模型上の接着ブリッジ(裏から歯がない部分に伸ばして歯を作っています)

歯の表面は治療しておらず、歯の裏をわずかに調整してセラミックを貼り付けています。

大きく削ることもなく装着ができて、歯に優しい治療です🦷✨

接着ブリッジが可能な条件は、ラミネートベニアと一緒で隣の歯のエナメル質という表面の硬い部分が残っていて、噛む力があまり強くかからない部位になります。

通常のブリッジ治療

通常のブリッジは、両隣の歯の全周を削って被せていく治療で、橋をかけるように作ることからブリッジ(橋)と呼ばれます🌉

全周を削るので歯には優しくないですが、全周を覆う分だけ強度があり割れにくいメリットがあります。

この症例のブリッジ治療の選択

今回の過剰歯の患者さんは、左下の奥歯がなく前歯に強い負担がかかること(歯がない欠損部位の治療について説明するも、左下の奥歯の治療は希望がなかったため)

スポーツをされていて、咬む力も強いこと

前歯に削れたような痕があること(食いしばりの疑い)

などから接着ブリッジは適応外と判断し、通常のブリッジ治療を選択しました🦷

問題点

矯正治療で歯を動かして空間を作らない限りは過剰歯を抜いた後の空間が通常の歯より小さいので

ブリッジで補う歯の形を作る際に小さな歯になりやすく、過剰歯と同じ小さな歯になってしまうと審美的な改善はできてないことになります。

歯の大きさを取るために多く削ると神経が出たり、歯が滲みる知覚過敏症状が出やすくなり、最悪神経を取ることにも繋がります。

神経を守りながら出来るだけ歯を削って、過剰歯の小さな歯を抜いた後のスペースを出来るだけ多く確保することが必要となります。

実際の治療の流れ

・まずは過剰歯を抜歯します。

・次にブリッジの支えになる歯を削っていきますが、一回少し削ってしばらく日数を置き、滲みたりがなければまた歯を削ってを繰り返すことを複数回行い、神経を保存しながらブリッジの支えになる歯を小さくしていきました。

・ブリッジの仮歯を入れているので、削るたびにその形を調整、過剰歯が小さく歯茎の位置も不揃いなため過剰歯を抜いた部位の仮歯を調整しながら歯茎を押して歯の形を修正していきます。

(上記の写真もありますが、抜歯後で少し出血していたり、仮歯の調整して歯茎をわざと凹ましていたり見る方によっては気分を害されることもあると思うので載せておりません😰どうしても見たい方は、院内で資料としてご覧いただくことは可能です。)

歯の大きさや歯茎を押して歯の長さを合わすのには限界がありますが、こうして少しづつ仮歯を調整して歯の形と歯茎の形を作っていきます。

整ってきたら、患者さんに確認してもらって良ければ最終的なブリッジを作製していきます。

セラミックブリッジ装着

治療後:セラミックブリッジを装着
治療後:正面観 治療前は過剰歯の部位は下の前歯が前にありましたが、治療後は上の前歯が前にきています

このような形で仕上がりました。

過剰歯を抜いたのと、隣の歯をかぶせただけなので

向かって右側の歯は未治療で少し長かったりしますが、患者さんは気にされていなかったのでこのままにしています。

もしもっと見た目を綺麗にしたくて前歯全体のバランスを考えるなら、長い部分を少しだけ歯を削って長さの調整をするか、セラミックのラミネートベニアなどで歯の形態と色の変更を考えますが。

特に問題のない歯で、見た目が気にならないとのことで治療対象にはしませんでした。

その後の経過

治療後数年して

左の奥歯がなくて咬みにくいため、右側ばかりで咬んでおられて顎関節症を発症したため

左側でも噛めるようにしたいとの希望で、左下に1本だけインプラント治療をして奥歯で噛めるように治療しました。

過剰歯の治療前:左下の奥歯がなく上の歯が伸びています
過剰歯の治療後:治療希望がなく、左下の奥歯は無いままです
左側の奥歯の治療後:伸びた左上の奥歯を削って神経を残したまま冠を入れ、左下にインプラント治療

伸びていた左上の奥歯を短くしないと左下にインプラント治療ができないため

前歯と同じように少しづつ歯を削って神経を残しながら歯を短くして金属の冠を被せました

その後に左下の奥歯がない部分に1本だけインプラント治療をして奥歯を作りました。

お忙しい方でメンテナンスも途中で途切れてしまったりすることもありますし

ブラッシングに波があって、プラーク(汚れ)が残りやすく歯茎が赤くなっていることもあって心配ですが

時間ができて来院された際などに、可能な範囲でメンテナンスをしております。

気になる前歯は…

治療後5年経過時

たまたま来院された時の写真ですが、この時は治療後5年以上経過しております。

年数が経っても特に問題はなく綺麗な状態です😊

まとめ

この治療では、矯正治療や治療する範囲を増やせば治療しやすかったと思いますが

過剰歯の抜歯と隣の歯までのブリッジ治療だけという制限があって難しい治療となりました。

また最初に説明していた左下の奥歯がないことによる咬み合わせの問題も、数年後に顎関節症という形で起きてしまったりもありましたが

結果的に過剰歯以外の抜歯はなく、前歯の見た目や左下のインプラント治療にも満足して頂けて、当院としても嬉しい気持ちです😊

(治療内容や治療する範囲に制限がある場合は、治療できることにも制限があるため望まれるような治療結果にはならないともありますのでご注意ください。)

この治療には

歯科衛生士さんによる歯周治療やメンテナンス

歯科技工士さんによる色や形を合わせたセラミックブリッジの作製

受付・歯科助手さんの予約管理や治療への励まし、治療中のアシストなど

さまざまな人が関わっております。

歯科医師が治療計画や治療後の結果を予測して様々なことを考えますが

1人で治療できるわけもないので

このような満足頂ける治療結果を実現するためにはチームでの歯科医療が大切だと思います。

これからも患者さんのご希望に出来るだけ応えることができるように、医院全体で努力してまいります。

もしお口の中でお困りごとがありましたらお気軽にご相談ください‼️🦷✨

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