山口県宇部市の歯科医院「歯科・沖田オフィス」院長の沖田です。
なかなかブログを更新できていないのですが
たまにホームページを見ましたとお声がけ頂いたり
ブログで治療内容を見て、あんな風に治療したいなどのご希望があったり
そういったお声を頂くので、しっかり更新していかないとと思いつつ
歯科治療を行う歯科医師としてだけでなく、院長としての経営的なことや
保険医療機関としての書類提出や報告などもあって
時間がなくなって、なかなか更新できていないのですが。
できる範囲で更新できたらと思っています^^;
皆さんが知りたいこと、気になることを書いていきたいと思うので
そういったことがあればお気軽にご相談ください(^^)
目次
前歯が無い、前歯を抜いた、前歯を抜かないといけない
そういったことでご相談を受けることがあります。
前歯がすでに無い時、主な治療方法は3つあります。
前歯が無い時の治療方法
以前のブログでも歯がなくなった時の治療方法は主に3つあると書いたことがありますが
①ブリッジ:となりの歯を削って橋をかけるように補う治療方法
(最近では噛む力が強く加わらない場合に、歯をほとんど削らずに貼り付ける接着ブリッジという方法も)
②入れ歯:必要に応じてとなりの歯をわずかに削って、取り外しをする部分入れ歯を装着する治療方法
③インプラント治療:となりの歯は削らず、人工歯根を埋め込んで歯を補う治療方法
主にこの①〜③があります。
①と②に関しては保険治療と保険外診療(自由診療)がそれぞれありますが
保険診療では、指定された材料や治療手順などが決まっており
材質や見た目(審美性)などについてはあまり考慮された治療はできません。
ブリッジ、入れ歯の保険診療と自由診療の違いについての説明は今回は割愛させて頂きますが
もし気になる方は医院の方でお気軽にお聞きください!
実際の当院での治療例
「左上の前歯が無いままなので治療したい」と言われて当院に来院された60代後半の女性の患者さんです。
欠損している歯の隣はレジンという白い詰め物がされてはいますが
ほとんど削っていない歯になります。
お聞きすると、入れ歯は嫌だとのことで
固定式のブリッジかインプラントかで治療を考えていきました。
ほとんど削られていない自分の歯を削るのはもったいないのと
奥歯にインプラントをされており、インプラントに抵抗感がないとのことで
相談の上で患者さんはインプラント治療を選択されました。
歯がなくなった後の問題点
歯がなくなると、歯の根(歯根:しこん)の部分の周りにある歯根膜という組織がなくなり
歯根の周りの骨を維持する血管もなくなってしまうことで、骨と歯茎が痩せてしまいます。
本当は抜歯した時に歯槽堤温存術(ソケットプリザベーションとかリッジプリザベーションと呼ばれます)
という、人工骨やコラーゲンなどを入れて組織を減らさないようにする治療をしておくのがベストですが
保険治療の中には無いので、一般的にはそういった説明も無いまま抜歯されることが多いです。
インプラント治療を考えている方は、抜歯の際に歯科医院の方によく相談されてください!!
この患者さんも、何も処置がなく歯が無いままだったので、歯茎と骨が減っています。
このままインプラント治療をしても、骨も歯茎も足りないため
歯茎が下がったり、インプラントが見えてしまったり、見た目の悪い歯になってしまいます(・_・;
骨や歯茎を増やす処置
足りない骨や歯茎をそのままでインプラント治療をするわけにはいかないので
骨や歯茎を増やしてインプラント治療をする必要があります。
骨を増やす処置を骨造成術(GBR:じーびーあーる)
歯茎などを増やす処置を歯肉増生術や歯肉形成術などと呼んだりします。
インプラントができないくらい骨や歯茎が無いときは先に増やす処置が必要ですが
当院のCTで確認したところ、骨はインプラントを埋入するのにギリギリあったので
ズレて骨がないところにいかないよう、ガイドと呼ばれるインプラントを決めた位置に入れるための装置を作成
治療期間を短くするために、インプラント手術と同時に骨造成術を行いました。
上の最初の歯茎が凹んだ写真と比べて、凹みがなくなって平らになっています。
他の部位から歯茎を移植する方法もありますが、こちらはそのようなことはせず
一回のオペでインプラントと骨造成が出来ました( ^ω^ )
2次オペ〜仮歯装着
ここから治癒とインプラントと骨がくっつくのを4〜6ヶ月程度待ちます。
ちなみに、この時は約4ヶ月ほど待ちました。
その後2次オペと言われる、歯茎の下にあるインプラントを出す処置をします。
そこから数週間、歯茎の治りを待ってから仮歯を作成
その仮歯を調整して、歯茎の形や歯の形を合わせていきます。
問題なければ、歯茎の形とその仮歯の形の型取りをして、歯科技工士さんに伝えていきます。
前歯インプラントにジルコニアセラミックを装着
最終的な型取りなどをして、出来るだけ隣の歯に合わせた被せ物を作ります。
今回は高い強度と汚れがつきにくいジルコニアを用いて
隣の患者さんご自身の歯に出来るだけ合わせるためにジルコニア表面にセラミックを盛り上げる
レイヤリング(築成法)という、一番歯の色を再現できる方法でオーダーしました。
結果は…
最終的な被せ物を装着したところを少し拡大したところです。
写真の右側の歯になりますが、パッと見たらインプラントとわからないような見た目で
このように普通の状態で唇がかぶさっていると、まったく人工物とはわからないくらいの見た目です^_^
前歯がしばらくなかった時と違って、自然な感じの歯が入って喜んで頂けました。
今回の治療のまとめ
・来院時年齢:66歳
・性別:女性
・主訴:前歯がないままだったので治療したい
・診断:左の前歯(左側上顎側切歯)の欠損、歯肉と歯槽骨吸収を伴う前歯部審美障害
・処置内容:CT、模型による診断→1次オペ(インプラント埋入と同時の歯槽骨造成術)→2次オペ
→仮歯のための型取り後に仮歯装着→仮歯調整と患者さんの希望確認
→最終的な型取り→ジルコニアセラミック装着→メインテナンスへ
・通院期間:治療計画から歯の装着まで約9ヶ月間、消毒など含めて計15回程度の来院
・費用:CT撮影、ガイド作製、骨造成術と材料費を含むインプラント外科処置等→約¥280,000
アバットメント、仮歯、ジルコニアセラミック(レイヤリング)→約¥230,000
合計費用:¥507,600(税込:治療当時の消費税8%)
(✴︎上記は治療当時の治療価格や材料費、消費税なので現在とは価格が変わります)
・リスク:清掃不良の場合は隣の歯の歯周病からの感染やインプラントが感染する可能性があります。
歯茎や骨が痩せて退縮することがあります。
稀に強い力が加わるとセラミックが欠けたり割れたりする可能性があります。
自分の歯が移動することがあり、インプラントと歯の間に隙間ができることがあります。
リスク回避、実際にトラブルが起こった時の対応
上記のリスクを回避するため
まずは歯周病菌を増やさないように定期的な清掃が必要です(定期的な通院を条件に医院独自の保証制度あり)
噛み合わせが変わって強い力が加わる場合は、噛み合わせの調整を行います。
睡眠時の歯ぎしりや食いしばりなどが強い場合はマウスピースを装着して保護が必要になることがあります。
違和感等でマウスピースが使えない方、咬む力が強すぎる方にはボツリヌストキシン注射をお勧めすることがあります。
位置が変化していく自分の歯と骨にくっついて変化しにくいインプラント間にできた隙間が気になる場合
被せ物の修正や作り直し、隣の歯の治療、小矯正などで対応します。
当院では劣化や壊れない限りは使用した仮歯を保管しているので、仮歯に交換して修正や治療が可能です。
インプラントはきちんと清掃や調整などのメインテナンスをしていくことで長く良い状態を維持できます。
以前はインプラントを入れて歯ができたら治療は終わりという歯科医院も多かったようですが
自分の歯でも失ってしまうのに、人工物であるインプラントをきちんと維持していくことは大変なことなので
インプラントに最終的な歯が入ったところで一区切りではありますが
そこからまたインプラントを含めた自分の歯や口の健康を守っていくためのスタートで
日々の歯磨きやうがいに、歯科医院での定期的な受診でメインテナンスをしていくことが大切です。
当院でのインプラントを含む治療への考え方
もし何かで歯を失ってしまった場合や、抜かないといけない歯がある場合など
なぜ歯を失うことになったのかを考え、出来るだけ改善できるところは改善して
治療をしていくことが大切だと当院では考えております。
インプラントはあくまで入れ歯やブリッジなど歯を失った時の治療方法の1つです。
患者さんの治療への希望やご予算などをお聞きしながら
どうしたら今より良い状態にできるかを考えて治療計画を立て
その治療計画の一部にインプラントか入れ歯かブリッジを選択するだけだと思っています。
文章だとわかりにくいことも多々あるかと思いますので
お困りごとなどがありましたらお気軽にご相談ください。